家元ご挨拶

清泉幽茗流 新家元 古川純佳

煎茶道 文人華道 清泉幽茗流
新家元 古川純佳

 清泉幽茗流は2013(平成25)年に創立40周年を迎え、この機に、初代・古川純香より私が家元を継承することになりました。これまで当流を支えてくださったすべての皆様への感謝の気持ちと共に、芸道を引き継いでいくことの重さに身が引き締まる思いでございます。

 芸道は、古きもの(伝統)を等しく伝えていくことです。しかし、その古きものがさらに生き生きと本来の力をするためには、現実(現代)を見すえ、よりよい方法で未来へつなげていかなくてはなりません。それゆえ、煎茶道・文人華道を「実技」と「理論」の両面からとらえ、「温故知新」の精神で時代に応える茶を追求していく所存でおります。

 お稽古とは、古いことを学び、心と体を使う身体的行為、すなわち「お手前」を身に刻む「実技」の連続です。具体的には、「暮らしのお茶」、「文人茶」、「格式茶」を三つの柱とした「お手前」=「芸」を身につける。さらにその「芸」を支える理念や論理、歴史などの学問的な側面も学び、理解していく。つまり「芸と知の調和」をもってしてこそ、この現代社会の多様性に応答することができるのではないでしょうか。

 「道の文化」では、「松に古今の色なし、竹に上下の節あり」という言葉が使われます。同じ芸の道を歩む者同士、節度を忘れず、共に生かされていることを実感しながら、「礼節と和合の精神」を貫く。そして何より、個々の人生において当流の芸道を身につけ、若きも老いも己のあり方で表現し、会員活動を行っていくことに何らかの価値や喜びを見いだしていただければ幸いです。

 「清」き水、「泉」から湧きいで、とどまらず、「流」れあまねくいきわたり、「茗」茶うるおい、しずく輝き、光りとどきて「幽」冥界、この世とあの世をつなぎ、人の心と宇宙万物が響きあう。
・・・そんな、「清泉幽茗流」でありたいと思います。

 失われつつある人間性をとり戻すためにも、一碗の茶から心豊かな一歩を踏み出しませんか?お待ちいたしております。



清泉幽茗流 初代家元 古川純香

煎茶道 文人華道 清泉幽茗流
初代家元 古川純香

 清泉幽茗流家元として、江戸時代に生まれた日本の伝統文化、煎茶道・文人華道を現代生活に生かそうと、その伝承と普及に30数年間努めてまいりました。その間、門下生や多くの方々に支えられながら、「芸道は己を裏切らない」との信念のもと、道の文化を伝えるためさまざまな試行錯誤を重ねてまいりました。
 そうした経験から、何よりも先ず、当流では、持ち運びできるお茶道具とごく小さなお花によって、質素で生活に即した、各々の身の丈にあったお茶とお花が表現できるということを強調したいと思います。

 具体的には、暮らしのお茶・お花、文人たちがめざしたお茶・お花、そして儀礼性の強い格式のお茶・お花・・・というようにカリキュラムを明文化し、伝統的な手法を合理的でわかりやすく伝授するよう心がけております。先人たちが残してくれた、「いたるところに煎茶席あり」という柔軟さと多様性をモットーに、温故知新の精神で、この変動多き世相に対応しているといえましょう。

 一方、煎茶道・文人華道を多くの方々と分かちあう場づくりにも力を注いでおります。典型的な茶室における格式茶や自由で風雅な文人茶の披露などといった茶会のほかに、音楽家や美術家たちとのコラボレーション、ギャラリーや伝統芸能の舞台などの席で、あるいはホームパーティなどで、お茶やお酒のお手前でもてなすなどという試みもいたしております。また韓国・台湾・中国など、お茶を通じた海外との交流も継続中、バリエーション豊かな茶の表情を演出しております。

 まさに「人みて法とけ、物みて法とけ、所みて法とけ、そして、茶の葉みて法とけ」の精神です。「茶の葉みて法とけ」とは、各々の茶の性質、個性をよく知るということです。茶を媒介にものごとの哲理をくみとりながら、それをさらりと表現していく―伝統は私たちの日常にこそ息づいているのです。

「日常茶飯事」との言葉通り、喜怒哀楽と共に生活になくてならないお茶に、ちょっとひと工夫。そんな煎茶文化の世界を、どうぞ皆様、お気軽におのぞきください。皆様のセンス・アップはもちろん、子どもはままごと遊びのように、若い方はマナーとエチケットの練習に、実年の方は明日への活力と友だちづくりに、老年の方は孤独を防ぎ、心身の運動に・・・いかがでしょうか?


清泉幽茗流 煎茶道・文人華道の特徴とその理念

  • 「清風清雅」、「風雅清貧」の精神を忘れずに、各人のあり方、身の丈にあったお茶・お花の表現を引き出す。
  • 温故知新の精神で先人達の知恵を生かし、「いたるところに煎茶席あり」を実践する。 お手前の柔軟性と多様性を生かす。
  • 「人みて法とけ、物みて法とけ、所みて法とけ、茶の葉みて法とけ」―物事の本質を見極め、精神の適応力や忍耐力、他者への心づかいを養う。
  • 自然の理にかなった手順で、一心に美味しいお茶をいれる。茶文化に流れる哲理を深く掘り下げながら、現代の言葉でさりげなく表現する。
  • カリキュラムを明文化し、先人たちの文化を現代の生活様式にあわせて身につけながら、その真意を継承する。
  • 茶を媒介に思想・儀礼・風習等を発展させてきた東アジアの国々との茶文化交流を推進し、互いの歴史や文化を理解し尊重しあい、開かれた煎茶文化を創造する。
  • 誰もが伝統文化の担い手としての可能性をもっている。特権化ではなく、お手前を演じる者の平等性・無名性・民衆性を重んじる。
  • 煎茶道・文人華道の世界観は、人間も宇宙万物の一つであり、すべてかけがえのない存在であるという視点に基づいている。そこに謙虚さと他者を尊ぶ慈しみの心を学び、自己中心的な我が身をふりかえる習慣を心身に刻む。

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